SORAGOTO

いつ、わたしが終わってもいいように。頭と心を言葉にしておく。

今後の目標

大それた記事タイトルをつけてしまったものだと、書き始めから後悔している。今後だとか、目標だとか、そんな大仰な話にはなりそうもない。

ただ、この10年悩んだすえに決めたことがあるので、書き留めておきたいと思った。

 

わたしには、子どものころから書いている物語がある。3部構成のとても長い物語で、いわゆる異世界ファンタジーもの。もうかれこれ30年近くの付き合いになると思う。

作り始めたきっかけは、友達から「一緒にお話を作らないか」と誘われたことだった。一緒に作る人がいれば、商業誌に載っている漫画の話をするように自分たちの物語のことを語り合える。だとしたらそんなに楽しいことはない。物語を作る孤独にうっすら気づき始めていたわたしは、その誘いにすぐにのった。

わたしが文章を書いて、友達が漫画にした。こんな設定はどうだろう、ここはこうしたほうがいい(いまの表現にすると萌えるとかエモいとかになる)、というような話し合いを重ねて数話を作った。

けれどそれも高校進学で途絶えてしまった。友達とは連絡をとっていたし、たまに遊んでいた(し、なんならいまでも繋がっている)けれど、物語の続きを一緒に考えることはなくなり、高2になるころには物語はわたしに託された。

 

……というのが、わたしがサイトで公開している「THE FATES」(以下TF)というお話のそもそもの在りよう。

 

このTF、いくつか段階がある。

漫画にしたのは1部3章のあたりまで。以降はわたしが小説にしていて、高校を卒業するころには1部12章(&過去編)くらいまで書いていた。大学生のころはほとんどまともに小説を書かなかったのでひとつも進まず、社会人になってふとしたきっかけでホームページを作ったので小説を載せるようになった。1部を完結させながら、序盤から12章までを改稿したりもした。2部は完結させるまで6年かかった。終わってみると1部の倍近くものボリュームになり震えた。

つまり漫画だった一段階目、改稿前の若さが残る二段階目、現在サイトで公開している三段階目があり、わたしはいまここに四段階目を足そうとしている。

 

話は2部を書き終えたころにさかのぼる。

当然わたしは3部についての考えを巡らせていた。ここまでの伏線をどう回収するか、どういった展開を持ってくるか、ああすればきっと楽しい、この人にはこうなってほしいなどなど、さまざまなイメージが膨らんでいた。……が、終わり方だけがいっこうに見えなかった。どう辿り着くのだろうかと物語の行方のVTRを頭のなかで何度も流してみるけれど、ラストはモノクロの砂嵐に飲みこまれてしまう。よくよく考えてみれば、このお話は(登場人物たち、とくに主人公にとって)いったい何を目指した物語なのかという、根本的な核の部分がいっさい提示されていないことに気づいた。

なるほど、どこにも着地できないはずだな……。

 

物語を作り始めたとき、どこに着地するかなんてまったく考えもしていなかった。お話というのは作り手がどうこうせずともやがてどこかに行き着いてくれるのだと思っていたのかもしれない。(それはひとつの真理でもあるのだけども、その真理へ到達するためには自分が物語の苗床になるくらい養分を、つまりたくさんの思考を重ねないと可能性は薄く思う。)

事実、わたしはそれまでにいくつか短い漫画を描いたことがあったけれど、どれも終わり方に苦労するなんてことはなかった。なぜならそれらのお話がごくごくシンプルな形式をしていて、物語の法則にそうと知らぬまま従って書かれていたものだったため、自然と流れ着くことができたからだった。

TFはなかなかに面倒な構造をしているし、登場人物みなが個性つよつよで、見かけこそ異世界ファンタジーで伝説だ封印だなんだと展開するけれど理不尽に感じていることや窮屈に思うことなどがぎゅうぎゅうに詰め込まれている。つまりオリジナリティーが強い。畢竟どこにもお手本はなく、終わり方は自分で用意する必要があった。

 

そのことをはっきりと自覚したのは、2部が完結してから半年後か一年後か。たしかなことは覚えていないけれど、それほど時間は経っていなかったように思う。

そしてその自覚は同時に、この状態のままでは物語の完結どころか3部を書き始めることすらも厳しいぞとわたしに突き付けた。

 

突き付けられたわたしはどうしたか。

TFと向き合うことから逃げ出した。

 

自分の力不足はずっと感じていたし、物語を終わらせる力をつけたいとも思っていた。かっこよく言えば修行に出ていたということになるけれど、わたしは目をそむけ続けていたように思う。

長編、中編、短編、いくつかを書いた。映画やドラマも漫然と楽しむだけでなく、構成などを意識的に見るようになった。引き算の大切さ、遊んでよいところ、隙の作り方、……それらが自分にも扱えるかはわからないけども少し気づけるようにはなった。

 

そんな折、ちょうど去年のいまごろ、長編をひとつ書き終えた。久しぶりに長編を完結させることができて、わたしのなかのスイッチが入った気がした。

そろそろTFに戻ってよい頃合いなんじゃないかと。

 

……戻れば、設定を見直すことも含めた全面大幅改稿になることは避けられない。1部などは特にどれだけ原型が残るかもわからない。

でも、できればそれはしたくない思いもあった。というのも、このお話は友達と作り始めたものだから設定はすべて残したかったし、いま公開しているお話を読んでくれた方だっている。せっかく大切な時間をいただいて読んでもらったものなのに、まったく書き換えるなんて……、いやもうここの思考に立ち戻るといまでもやはり心は揺らぐ。とても揺らぐ。

とはいえ完結させるには作り直すしか道はない。

たとえば未完のままでもいいから前のほうが良かったと言ってもらうには、最後まで書ききらなければその地平には立てない。そのためにいまのお話が木っ端みじんになって面影が消えてしまったとしても、書ききらないことには始まらない。

そう、去年の秋ごろに思い至り、決意した。

(去年……2022年は3月から9月までの約半年間、まともに歩けないくらいすっかり体を壊してしまって苦しかったから、それもまた心をかためる助けになったのかもしれない。ほんとうにやりたいこと、書きたいものは何なのかを考えられた気がする。もはや終活の一環なのか……)

 

物語の骨組みを解体して、残したい梁を選び取って、新しい建材も導入して、罪深い趣味嗜好を存分に練りこんで、焦らず、じっくりと吟味している。

そもそもの設定のアラが多すぎて辟易したけれど、それらのアラは、かつての自分がやりたかったけれどうまく表現しきれなかったことの痕跡でもあるので、拾い上げて組み立てなおしたりもしている。ものによっては業が深くなった部分もあり、すでに満足しかけている。たまらんですわ。まだほんのわずかしか本文なんて存在しないのに、プロット帳を広げてあれこれ語りたくなるような浮付いた気持ちにもなっている。できないので、この記事を書いている。

 

本文を公開できるのがいつになるかはまだわからないけれど、これがもう最後だから、しっかりと書いていこうと思う。

もしかしたらすべての物語を含めて最後になるかもしれない。そんなふうにも、いまは思っている。

 

そういうわけで、「THE FATES」全面大幅改稿します。